東芝のグローバル戦略ーグローバル・マーケティング研究会

2013年12月12日、明治大学経営学部大石芳裕教授の主催されるグローバル・マーケティング研究会に参加してきました。 今回は「東芝のグローバル戦略~海外B2Bへの取り組み~」と題して、株式会社東芝の顧問 志村安弘さんのご報告でした。

会社概要に続いて、
東芝グループの事業概要として、経営方針と経営環境、係数目標、海外事業体制
海外B2Bへの取り組みとして、なぜB2Bへ注力するのか、顧客要求へのアプローチ
最後に、これからの若い人たちへのメッセージ、と言った内容でした。
東芝のエネルギー、ストレージ、ヘルスケアの3つの柱を中心にスマートコミュニティを実現していいく姿、B2Bに注力する理由、B2Bにおけるマーケティング戦略が非常に理論的に報告され、大変わかり易い報告でした。

今回特に印象に残ったのは、次の3点でした。

B2Bマーケティングの特色

B2Bマーケティングにおける多様な取引関係を類型化、その多様な販売関係において保守サービスの質をどのように維持するか? コストとの兼ね合いで販売チャンネルを世界規模でどのように最適化していくか?がポイントと指摘されていました。 B2B2C, B2B2B、B2Bの指摘が新鮮で、さらにそのチャンネルの質とコストの最適化に苦心されている様子がわかります。 また、B2B領域での顧客視点とはどういったものか?について、顧客の価値づくりを共に進めること、と結論づけられていたのも印象的でした。 これを伝統的な4Pに当てはめ、Customer Solution, Customer’s cost, Customer Convenience, Customer Communication と再定義、それぞれを具体的に検証されていました。

ブランド

どうしても、日本をベースにした企業はブランドに対する考え方にバイアスがかかってしまうようです。 流通経路の複雑さから、商品ブランドが独自に発達・洗練された日本の特色もあるかと思います。 大石教授による補足にもありましたが、B2B の特化した企業においても、そのブランドが取引の成否に大きな影響を与えます。 どのように東芝ブランドを構築していくのか、今後の課題かと思われました。

組織

新卒を大量に採用して育てていく日本企業の特色からか、もしくは伝統的な人事部の役割にとらわれているのか、東芝では、マトリックス的な組織は採用されていません。 欠陥はあるが、これに変わる組織編成がないとして多くの外資系会社や日産等に採用されているマトリックス型組織、これが東芝に適合するのか? 最適な組織論として機能するのか? おそらく今後検討する課題となるのではないかと思いました。

次回のグローバル・マーケティング研究会は2014年1月16日、元日本サムスンの顧問、石田 賢さんのご報告です。


中国で売れないなんてありえない! グローバル・マーケティング研究会

ロリポップのサーバー・ハッキングがまだ進行中であった2013年8月29日、第69回グローバル・マーケティング研究会(明治大学経営学部大石芳裕教授主催)が東京・御茶ノ水、明治大学リバティタワーで行われました。 今回は中国市場戦略研究所の徐向東さんの「中国で売れないなんてありえない!~中国主要6都市での日本製品イメージ調査など現場からみた日本企業のマーケティングや人材活用などの問題~」と題しての報告でした。

徐向東さんも、グローバル・マーケティング研究会への参加は3回目、
今回は2013年2月、3月に実施された日経産業地域研究所と共同で行った中国6都市での「各国製品イメージ調査」の結果をベースに、
日本商品の評価が埋もれがちな原因の分析、
中国市場に合った積極的な認知・理解の促進、
中国市場に合った販売方法(B2C)、
中国市場の未充足ポイント訴求、
日本製品の評価向上のためのアクションの具体的な提案、といった流れで報告されていました。

今回、印象に残ったのは以下の点でした。

空気清浄機、メリーズ売れすぎて商品がない

中国市場の消費者が欲しがるものが、売れすぎて欠品している事によって、売り場での日本ブランドの存在感が逆になくなり、その他の欧州ブランドばかりが目立つようになっているとの指摘でした。 中国市場でブームのごとく特定の商品が売れ始めるのを、なかなか日本にいると判断できません。 このブームをどのように創りだすか、感知するかがマーケティングの鍵になってきます。 この他南部鉄器もブームになっているという話が面白かった。

体験、口コミが重要

長い歴史の中で、また現在においても唯一信用しているのは「口コミ」。 非常に納得の出来る話です。 すべての国民が「中流」の生活をしてると思い、マスコミ、マスメディアの宣伝、政府の発表を信じて疑わない多くの人がいる日本とは根本的に違うと考えるべきですね。 徐さんは触れませんでしたが、これに自分が属するグループ、もしくは属すべきと考えているグループの口コミ、と言った要素が外せません(このあたり、徐さんに突っ込んで聞きたかったのですが、今回懇親会に長く居られなかったので聞くチャンスを逃してしまいました。 ちょっと残念)。 どの経済的レベルであっても自分のグループの人達が持っているもの、経験しているものについて、「自分がそのグループに属しているのだ」ということをしっかりと示すために、無条件に購入し、通い、出かける、そういった要素があります。 口コミで、まだ使ったこともないメリーズや、南部鉄器を購入する、まさにそうです。 グループの経験を共有するために、一生使うことのないキッチン用品をどんどん購入する、などの話を聞いていて興味が尽きることがありませんでした。

中国独自のブランドが育ってきている

やはり動きが早いですね。 ここ5年から10年の間に様々な分野で中国独自のブランドが育ってきています。 今回報告があったのは、化粧品の分野、カジュアル衣料の分野でしたが、すべての分野で起こっていることでしょう。 販売において中国市場を知り尽くしている相手ですから、これに一定の品質の評価が定まってくると強くなりますね。

次回のグローバル・マーケティング研究会は、10月1日。 福島のハニーズ 江尻義久さんの報告です。

 

 


モノづくり企業を活性化する4つの秘訣 グローバル・マーケティング研究会

これもちょっと前のアップになりますが、2013年7月30日第68回グローバル・マーケティング研究会(明治大学経営学部大石芳裕教授主催)の様子です。  今回は株式会社エンジニア、代表取締役社長高崎充弘さんの「モノづくり企業を活性化する4つの秘策-ネジザウルスGTの開発から得られたM_P_D_P-」と題した報告でした。

ネジザウルスGTの開発とM_P_D_Pの発見、中小企業と大企業M_P_D_P比較、モノづくり立国日本の生きる道、M_P_D_Pの進化と海外展開、On more thing, と言った流れで大変熱くユーモアを交えてお話いただきました。

私自身、ネジザウルスもM_P_D_Pも初めて耳にするものでしたが、2008年のリーマンショック後、対ビジネス(B to B)の売上が伸びない中、対消費者(B to C)へビジネスを転換していく中での工夫、経験をしっかりと理論化されていました。  特に、パテント・特許が中小企業のボトルネックになっているとのことでした。

私の感想としては、今後の海外展開、しっかりとした日本市場の現状認識に基づいた固い決意とともに、高崎さんもおっしゃっていた現地の息吹を直に感じるとともに、どのように経営方針を定めこれからの展開をしていくのか、中長期的に考えていく必要が有るなと感じました。  簡単なことではありませんが、避けれない必要なことだと思っています。

次回のグローバル・マーケティング研究会は、8月29日、徐向東さんの中国消費市場についての報告です。


グローバル・マーケティング研究会-難解なインド市場、インドの地の利、人の利、活かし方

 

ちょっとPCのハードディスクの入れ替えなどでおろそかになっていたアップデート、2013年6月25日のグローバル・マーケティング研究会(明治大学経営学部大石芳裕教授主催)の様子をお伝えします。

今回はインフォブリッジ、繁田奈歩さんの報告で、「難解なインド市場ーインドの地の利、人の利、活かし方」でした。  これまで繁田さんは「インド消費者TOPからBottom まで計11階層(都市部7階層、農村部4階層)を分析し、インド消費市場の未来を展望する」(2010年9月30日)「インド:Tier2都市部の実相(恒例1000人調査)-5大都市だけでは戦えない巨大市場-」(2011年7月4日)の報告を通じて、インド市場の調査分析を報告されていましたが、今回は、ご本人曰く「ちょっと方向性を変えて」インド市場への戦略策定に踏み込んだ内容となっていました。  ご報告内容は、インドのアウトラインの確認、インド市場へのアプローチ、マーケティングの要点(マーケティング・アプローチ法)、となっていました。

今回の私の感想は、報告そのものは、繁田さんの意図どおりに、豊富な市場調査分析に裏打ちされた上での、マーケティング戦略、方法に踏み込まれ非常に内容の濃いものになっていました。 そして、そこから透けて見えて来るものは、なかなか決断できないでいる一部の日本の経営者の悩みだったような気がします。 すでにインドをこれから伸びていく巨大なアジアの消費市場と認識し、例えば、ヤクルト、味の素、ユニ・チャーム、スズキなどは、独自の方法論でインドでの活動を拡大しています。 そうでない、これからインド進出を考えている日本企業、本当に決断できないでいるのでしょう。 株主に対する経営責任、権限に基づく決断、決断の柔軟な変更方法の欠如などの文脈でも説明できるかもしれません。

あと気になったのは、このような傾向が2010年位から見られ、日本企業のインド進出熱が下がっているかのように見えるとのコメントでした。 すでにインド進出してしまっている企業を追いかける第2グループにその傾向が強いのかもしれませんね。

このあと、7月30日にもグローバル・マーケティング研究会が行われています。 株式会社エンジニアの高崎充弘さんの「モノづくり企業を活性化する4つの秘訣」です。 これはまた改めてアップします。

グローバル・マーケティング研究会ーコカ・コーラのグローカライゼーション

2013年5月17日第66回グローバル・マーケティング研究会(明治大学経営学部大石芳裕教授主催)に参加して来ました。 今回の報告は「コカ・コーラのグローカライゼーション」日本コカ・コーラ、マーケティング&ニュービジネスIMC、副社長 鈴木祥子さんの報告でした。

コカ・コーラの歴史、ミッション、グローバル展開、2020Vision と呼ばれるビジネス戦略を非常に判りやすく、かつ深く語って頂きました。 やはり優れた戦略は、非常にシンプルで、誰にも判りやすく、理解されやすいという思いを新たにしました。 報告後の質疑もいつものように活発で、丁寧に答えていらっしゃる鈴木さんの深い理解が改めて強調されたように感じました。

今回私の印象に残ったのは、次の2点でした。

Chatter・チャター

「コカ・コーラで、マーケティングのベスト・プラクティスを、世界でどのように共有されているか?」との質問の答えの1つとして、複数の縦串、横串の同僚とコミュニィケーションを取ると同時に「いくつかのChatter のグループに属して、そこからも情報を取っています」との鈴木さんの答えでした。

Chatter とは、Salesforce が提供する社内のSNSプラットホーム。 要するにFacebook の社内版と考えればよいものです。 初期には、限られた機能しかありませんでしたが、現在では、Follow したり、されたり、グループを作って共同のコミュニケーションも取れるし、更に業務系の様々なプラットホームや顧客サービスとの連携も取れるように進化しています。 Salesforce のCEOであるマーク・ベニオフは2011年には「ソーシャル・エンタープライズ」という概念を提唱し、企業内のコミュニケーションがソーシャル化していく、と発言していました(2012年には、更に進化し、クラウド、SNS, モバイルでの変化を取り入れて、これからの企業のあり方を「カスタマー・カンパニィ」と称しています)。

さすがにアメリカ・ベースのグローバル・カンパニィであるコカ・コーラ、既に社内のコミュニケーションの一つとしてChatter を導入しています。 これによって、様々な社内のコミュニケーションにソーシャル化の変化が起きていることが想像出来ます。

「私が決めますから」

「本社からのプレッシャーや軋轢を感じることがありますか?」との質問、おそらく外資系企業は本社からの影響が強い、との先入観に基づく質問だったかもしれませんが、その答えが「感じたことはありません。 すべて私が決めますから」でした。

おそらく日本企業で働く人が、一番理解しづらいのが、権限>責任、そしてその責任に応じた>報酬という仕組みかと思います。 これまでの年功序列を前提とした給与制度のもと、誰も責任を取らず、その前提として誰が決定したのか、その権限は誰にあったのか、稟議の名のもとに権限、責任の所在があやふやになる組織である限り、またその組織に属している限り、理解が難しいでしょう。

鈴木さんは、一言「私が決めますから」と、日本でのすべてのマーケティング活動の権限が自分にあること、そして、その責任は自分が負うこと、を軽々と表現しています。 権限があり、責任を負うことを前提に、次々とビジネス上の判断をしていける人でなければ、勤まらないポジションですね。  コカ・コーラは、マーケティング活動において非常にローカルに権限移譲が進んでいる会社との印象を受けました。 コカ・コーラが得意とするイベント・マーケティングにおいても、本社がイニシアティブを取ったとしても、それを実施する権限は各ローカルに移譲されているのが印象的でした。

次回のグローバル・マーケティング研究会は6月25日、繁田奈歩さん(InfoBRIDGE)によるインド関連の報告です。